サヴァランの思い出
静嘉堂文庫の帰り道、ちょっとガッカリの気分で歩いていました。
何となくケーキ屋さんに目が止まり、ショーケースに引き寄せられるように入りました。
先日、学生時代の友人宅にお邪魔した時、当時の話が出ました。
学校の寮で同室だった友人です。
四人部屋で先輩は一級上の方でした。
その先輩が出かけると、よくお土産に買ってきてくれたのが
「 サヴァラン 」でした。
あまりキメの細かくない丸いケーキ地に甘めのお酒をたっぷりとしみ込ませてありました。
ケーキの上の部分を切り落とし、生クリームと缶詰のみかんを詰め込んで
切り落としたケーキを帽子のように被せてあったようです。
そして帽子のてっぺんには赤いチェリーがのせてありました。
食べると洋酒入りのシロップがジュワッと口の中に広がり、大人になったような気分に
なりました。
そして、頰がポワッと温かくなったような・・・・。
久しぶりにあった友人と声を揃えて「 あのサヴァラン! 初めて食べた時は、お酒が入っているのでびっくりしたわね 」 と、懐かしい話をしました。
本当によく先輩にサヴァランをご馳走になりました。
あれ以来、すっかりサヴァランのことを忘れていました。
先日TVの番組、「 グレーテルのかまど 」ーー松任谷正隆のサヴァランーー
という番組がありました。
音楽プロデューサーの松任谷さんは子供の頃からとりこになったそうです。
たっぷりと洋酒のシロップがしみ込んだ生地は 「個体と液体の中間」で
「クリームとのバランスで味が変化する」とおっしゃっておられました。
「フルーティで、華やかで、大人っぽ過ぎないところがいい」とも。
奥の深そうなこのケーキ。
でも、このところケーキ屋さんであまり見かけなくなったのでは・・・・。
ケーキ屋さんのショーケースの前で、懐かしいサヴァランを探しました。
たくさんの華やかなケーキたちの間に地味なこげ茶色の帽子をかぶったサヴァランが
ありました。
甘めの洋酒入りのシロップがたっぷりとしみ込んでいました。
あの頃に食べたお味の方が美味しかったような気がしました。
特別な、貴重なおやつだったからでしょうか。
また、どこかでサヴァランに出会ったら、味わってみたいと思っています。
このサヴァランにはフルーツもチェリーもなく地味でしたが、
きっとサヴァランの原型なのでしょう。
「 グレーテルのかまど 」では、作り方も公開していましたが、
ちょっと手がかかりそうで、私には無理な感じがしました。
私、食べる人です。